【脚本 宮下隼一 監督 天野利彦】
南隊員と呼べ!!
◆ ◆ ◆
「手すりのペンキに指紋が残っている」というくだりで「あ、それ“逮捕志願”ね」と、苦笑してしまった回。
それだけにとどまらず、特に意識してそうなったとは思わないが、長坂脚本にしばしば描かれる“ある事件が、過去の別の事件を想起させる”というパターンの、宮下版とも言える作り。
それはいいのだが、作劇上、気になるところが多々ある。
列記すると
・7年前の事件を、もう一度洗い直して、殺しであることを実証しようと、特命課が思い立つのが遅過ぎること
・そのくせ、あっさり7年前の真相は判明すること
・その事件、時田が担当していたという事実が明らかになるのが、果たして物語の最後で良かったのかということ
やはり、刑事ドラマとしての面白さを求めるなら、7年前の事件の真相こそが、鍵を握っていると、もう少し早い段階で特命課が気づいた方が良かったのではないか。
また、なんせ7年前の事件であるわけで、もう少し特命課が悪戦苦闘したり、無駄骨を折ったりして、捜査が難航する様子があった方が、真相が判明する場面を、より効果的に描きだすことができたのではないか。
まあ、そうなると、まるっきり『逮捕志願』だが…。
3つめに関しても、できれば、話の中盤あたりで、今回コンビを組んでいた叶に打ち明ける、もしくは、時田が事件に深入り、または暴走などして特命課の連携を乱し、なぜかと問われて過去を話す…という流れの方が、自然ではなかったか。
冒頭、死んでいた男を時田が知っていたり、7年前の事件に詳しかったりと、先にそのことに触れた割には、“時田が事件の担当者だった”という要素が、けっして劇中で生きていたとは言い難い。
結局、芦川よしみ演じる女の方にフォーカスし過ぎてしまい、刑事ものとしては、やや面白さに欠けてしまったように思える。
それより、むしろ「時田編」であることを全面に押し出した方が、ドラマとしての面白さは増したのではないだろうか。
こうして考えると、長坂氏の手法がいかに優れていたかということを、今さらながら思い知るのだが。
あと、こういうことは、このサイトで触れることはあまり好ましくないのだが、いちおうこれも、ドラマを構成するうえでは重要な“要素”のひとつになっているので、少しだけ。
要は、たとえ7年前とは言え、男はアレした女を、簡単に忘れるものだろうかという、いち男としての素朴な疑問。
まあ、それこそ人数自体が数えきれないとかいうのであれば話は別だが、述べ総数はともかく、“並の男”であれば、“絶対数”くらいは覚えてそうなものだが…。
ま、それはワタシの話なので、置いとくとして。
この回、『はぐれ刑事純情派』でおなじみの、大場順氏が登場。正直この人、はぐれ刑事以外であまり見たことないからな…。
そして、『大鉄人17』のレッドマフラー隊・剣持隊長の原口剛氏も登場。髭と役柄のせいか、この頃よりも、何年も前のワンセブンの頃の方が、むしろ老けて見えるから不思議だ。