【脚本 山田隆司 監督 辻 理】
所轄所刑事の後ろに、暴魂チューボの姿を見た!!
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かつて覚せい剤を使用していた男が、本当に“フラッシュバック”を起こしたかどうかを巡る事件の話。
まあ、一言で片づけると、つまらない話。
話をつまらなくした要素はいろいろある。
今回、叶が特命課に来る前から“おふくろ”と慕っていたという、食堂を経営する女性が登場する。
他の刑事ドラマに比べ、レギュラー刑事のインサイドストーリーが、多い「特捜」において、『掌紋300202』が、事実上唯一の身内話である叶。
その叶をして「おふくろの一言で、その後の刑事人生が決まった」と言わしめるほどの女性らしい。
…で、あるならば、もっと叶との関係をキッチリと描かないと、話の中で、その関係が生きない。特に、サブタイトルの前以降、しばらく出番がなく、ほとんど出てきていたことを忘れた頃に再登場するというのは、シナリオの構成も悪く、いただけない。
そのため、ラストシーンで、自殺しようとしていた“おふくろ”を説得する叶の姿が、イマイチ真に迫らない感じがして、非常に残念。
それに、“おふくろ”が本当に「自分の娘を刺し殺した男を、はじめから殺す気満々であった」のであれば、実の親子であったという真実が明らかになった直後に、“おふくろ”本人が、娘を殺した男をザックリ殺って、その光景に、ショックで呆然とする叶、という展開の方が、良かったのではないか。
って、そうなると、ほとんど『撃つ女』の焼き直し臭くなるが…。
ともかく、“フラッシュバックを起こしたように見せ、殺人を正当防衛のように偽装する”という手も、手が込んでいるように見えて、実はあまり面白くないし、なにより“娘を殺した犯人を母親が憎んでいた”という心情が、全く伝わらない。
つまり、あまりにも“余計な人間”が関わったことにより、肝心のテーマがブレてしまっているのである。
こう考えてみると、まるで本編45分持たせるために、まわりくどい手を使ったようにしか見えない。脚本家の技量ということもあると思うが、こういうテーマの場合、もっと直球勝負の方が良かったのではないかと思う。
それに加え、今回の神代課長は、叶に対して甘過ぎて、キャラクターが違っている。
叶が慕う女性が事件に関わっていることを知り、叶に捜査から外れるように命令する神代だが、それは逆だろう。
捜査を続けることを逡巡する叶に対し、捜査に加わるように厳しく言うのが、本来の神代課長ではないのか。
となると、もちろん、叶を逮捕に向かわせないのも、キャラとして違っている。いつもの神代課長なら「お前が手錠をかけるんだ」というくらいの非情さを見せるはず。
こういう“キャラのぶれ”というのは、多数のライターが書く連続ドラマの場合はつきものであり、避けられないのだが、これほどキャラが違っている場合は、脚本読みの段階で気がついて欲しいものである。
それと、見終わって思うのだが、最初の方に出てきた、「覚せい剤中毒者のために、奥さんが重傷を負わされた」という、中毒者を“カス人間”と言い放つ所轄所刑事が、もっと話に関わったら、また違う話になって、むしろ面白くなったのでは…?
(実際、関わるのかと思っていたのだが、1シーンだけの登場だった)
この回、レッドマフラー隊隊長の原口剛、特撮ドラマの声優として有名な依田英助、『仮面ライダーZO』の“ヒロシのおじいちゃん”の犬塚弘の各氏が出演。いつにもまして、特撮最前線の様相を呈している。
「フラッシュバック」の意味を紅林が婦警さんに説明するシーンは
なぜか記憶に残っています。
「特捜」に多い
「まっとうな人間がクズに殺されるが、クズはのうのうと生きている」
というストレートな展開にすればよかったかも。。
この「衰退期」は視聴者の目を意識するようになって「衰退」したのかも?
>影の王子さん
>クズはのうのうと生きている
まったく、しばらく人間なんていう稼業をやっていると、そのことは身にしみますね。
考えてみれば腹が立つことですが、まあそれが世の中というものなら…。
それはともかく、テーマがしっかりしているなら、なおさらストレートな展開のほうが良かったように思いますね。
確かに、この時期は放送時間帯が変わったわけですが、もしかしたら、1時間放送が早くなったことに伴って、なんらかの“数字上の違い”がで出てきて(たとえば、年齢別の視聴率とか傾向とか)、それに対策を講じざるを得なくなった、なんてことも考えられますね。
やはり、人気が安定している番組の放送時間を変えるというのは、マイナスの面が大きいのかもしれませんね。
あくまで仮定の話でしかありませんが、放送時間が変わっていなければ、もっと番組は続いたかも…。