【脚本 大野武雄 監督 辻 理】
父ちゃん!サブタイトルがモーレツに燃えている!
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これは、なかなか良いのではないか。
タバコの不始末で起きたと思われた火事に、特命課が事件性を見いだし、隠された殺人トリックを暴くという話。
犯人がトリックを仕組んだ理由は、出世のために別の女と結婚したいので、邪魔になった、今つきあっている女を殺すという、ありがちで陳腐なものではある。
しかも、その部分にあまり重点をおくと、しょーもないメロドラマになってしまう可能性は十分にあった。
しかし、本作では、そのあたりには重点をおかず、現場百回ではないが、特命課刑事が足繁く事件現場を訪れ、検証や証拠の捜査を丹念に行う描写に、長い時間が使われており、そのことが、この話を“秀作”たらしめている。
こういうパターンの回は、ありそうで、実は意外と少ないパターンなので、なおさら意味のある回なのではないか。
また、作品全体では、キャラクターのストーリーにそれほど触れなかった分、ラストで、炎にまかれて飛び降りて重体だった女が死んだり、新しい女が“人参抜きのきんぴらごぼう”を作っていたりするくだりが、逆に効いてくる。
そして最後は、犯人逮捕は描写されず、前述のことを受け、静かに怒りに燃えて、紅林が手錠を持って犯人を待つところで終わる。これもまた、良かったのではないか。
実際に出てきたトリックでも、氷でドアを塞ぐアイディアとか、音センサーの入った鳥のおもちゃを使うとか、なかなか面白い要素があったように思う。
シリーズ全体から見れば、特筆するほどの傑作ではないが、DVDに収録されるだけの水準は、十分にクリアしている作品。いや、むしろこういう、地味だが丁寧に作られている話こそ、発掘して世に出し、光をあてるべきなのではないかと思う。
この回、名作『新宿ナイト・イン・フィーバー』で強烈な印象を残した、赤塚真人氏がゲスト出演。赤塚氏は後に「仮面ライダーBLACK RX」にも出演する。
特撮ファンとしては、怪人の声でおなじみの西尾徳さんが、何気に出演している点にも注目。良い声だ。
どうでもいい話だが、火事にあった女の部屋、「国勢調査」のシールが貼ってあったな。職業柄、ああいうのには非協力そうなのだが。この頃はそうでもなかった?
証拠があがったことで「逮捕状だ、ハンコもらってこい!!」という課長。
すでに用意しとったんかい。
さすがは課長、抜かり無し。
にしても、相変わらず、いつまでメシ食ってんだ、犬養。