【触ってもいないのに足かせまでも外すとは奇跡】
後にメタルヒーローシリーズを数多く手がけることになる脚本家・扇澤延男のデビュー作。
本編をご覧になった方ならお気づきのように、この回は、特撮番組全体を通しても、たいへん稀有な作品である。
それは、登場するキャラクター全てが仮面を被った着ぐるみキャラであり、いわゆる“人間”もしくは素顔で登場する人物が一人も出て来ないからである。
本来主役であるはずの剣流星も、この回には1カットも出て来ない。主役がヒーローに変身しないというのは前例があっても、主役自体が登場しないというのは前代未聞である。
もともとは、最初と最後に登場していたらしいが、とってつけたように出てくるのなら要らん、というプロデューサーの判断で、この作品が出来たということだ。
またストーリー自体も、戦闘ロボット軍団元豪将・ビッグウェインとその弟子ゴチャックとの絆、そしてビッグウェインがメタルダーと対決するまでを主たる展開として描いており、メタルダーは“ただの対決役”というポジションでしかない。
もともと、敵である軍団員に主眼を置いた話が多い『メタルダー』ではあるが、この回はそれが“主役逆転”という現象にまで波及している。
この第11話は、完全な仮面劇であるということもあり、まさに特撮の魅力が詰まった名作である。今後も特撮番組の歴史の中で語り継がれることであろう。
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メタルダーと対決する戦闘ロボット軍団・軽闘士ブルギット。顔は完全にヨロイ軍団の影です。
ブルギットは、功名心に駆られ、自分を主張するためにメタルダーに挑戦したのだそうです。
ただ、メタルダーと戦うには剣流星を怒らせなければいけません。この軽闘士は、いったいどうやって剣流星を怒らせたのでしょうか。
もしかして、マツダファミリアに当て逃げでもしましたか。
しかし、正攻法では軽闘士ひとりでメタルダーにかなう道理がありません。ブルギットは敗れますが、「もっともっと強くなって、必ずお前を倒してやる」と言っています。
それはいいのですが、青い衣装にかなり汗がにじんでいます。この日は暑かったようです。あ、ロボットは汗なんかかきませんね。オイル漏れでしょうか。
敗れたブルギットは、修理屋のビッグウェインの元へ送り込まれています。暴れるブルギットに「おとなしくしろ若いの、修理が出来ん」というビッグウェイン。しかし「修理屋に戦闘ロボットの気持ちがわかってたまるか」と食ってかかるブルギット。修理されてる分際で生意気な奴です。
ところで、ブルギットはちゃんと修理されてますが、軽闘士でも勝手にゴーストバンクから外に出て、負けて帰って来てもお咎めなのでしょうか。
後の出来事を考えても、ゴーストバンクを出るには、それなりの許可と言うか手続きのようなものが必要な気がしなくもありませんが。それとも、たとえ軽闘士でも階級がつけば、ある程度自由なのでしょうか。
ブルギットがビッグウェインとともにゴーストバングに戻ると、軍団員たちがなにやら宝石のようなものを囲んでいます。ビッグウェィンを見て「なんじゃいこのジジイ」と、つっかかるダムネン。やっぱり使い勝手のいい軍団員です。
そこへやってくるゴチャック。ビッグウェインは元戦闘ロボット軍団の豪将であり、またゴチャックの師でもあったようです。
「心が呟く、このネロス帝国には、ワシの居場所はどこにもない、いたくないと」というビッグウェインは、見張りのブルギット、じゃなくて影を倒して逃亡を図ります。
「ゲートファイブより逃亡者発生!」というアナウンスに、なぜか都合良く戦闘ロボット軍団員だけが出てきます。現時点では誰が逃亡したのか分かっていないのですが。虫の知らせってやつでしょうか。ロボットですけど。
すると、逃亡者はビッグウェインであることが分かります。戦闘ロボット軍団は機甲軍団の力を借りて、ビッグウェインを探します。
バルスキーの指揮の下に集結する2大軍団員。なかなか壮観です。そして、ブルチェックとアグミスの“素顔”が登場、普段の顔がマスクであることが明らかになります。
ただこの二人、果たして捜索の役に立つでしょうか。
戦車と魚雷ですけど。
洞窟に逃げるビッグウェイン、しかしゴチャックにあっさり見つかります。どうやらここは、ビッグウェインお気に入りの場所だったようです。
こんな何もない洞窟で、ロボットが一体何をしてお気に入りだったのか、ちょっと興味のあるところです。
逃げる途中、ゴチャックは昔のことを語り始めます。ただ、昔のビッグウェインの肩にも“十字マーク”がついてますが、これって修理屋を示すマークじゃないのでしょうか。この時点では本当はついてちゃいけないような気もしますが。
「逃げるならこの谷伝いに。チェックポイントの狭間になっています」といった途端、その方向に強闘士ローテールを発見するゴチャック。若干ビビり過ぎです。
結局「あっちへ回りましょう」と、ビッグウェインを逃がすゴチャックですが、その様子を見事に雄闘ジャースに見つかります。もしかして、目にズーム機能のないヨロイ軍団やモンスター軍団がそこにいたら、見つからなかったのでしょうか。
一度集合する軍団員たち。「軍団長、奴は向こうの山を越えたものと思われます!」と、しゃあしゃあと抜かすゴチャックですが、「何を言うか!ゴチャック、お前の裏切りは見たぞ!」と、ジャースに告げ口され、逃亡ほう助として拘束されす。
もし、見た軍団員が自分より階級が下だったら、言い逃れのしようがあったかもしれませんが、残念ながら自分より上の雄闘でした。無念、爆闘士。
ちなみに、このシーンで使われている音楽、『メタルダー』では、あまり使われていない曲です。
この曲を聴くと、どちらかというと『特警ウインスペクター』の方を思い出すのは私だけでしょうか。
拘束されたゴチャックに「ビッグウェインはどこです!?」と聞くブルギット。しかし「知らん!」というゴチャック。確かに軽闘士に教える義理はありません。
しかしブルギットは、ゴチャックの足に付着した土の色で、ゴチャックのいた場所を推理。そして見事にビッグウェインを探し当てます。
その推理力と行動力、実は戦闘ロボット軍団に欠くべからざる逸材だったのではないでしょうか。
ブルチェックは、自分の知っているビッグウェインの伝説を話します。ただ毎度思うのですが、軍規を破った軍団員を倒すことって、そんなに誉められたことでしょうか。むしろ、そんなにしょっちゅう裏切り者を出すネロス帝国そのものに問題があるように思いますが。
ブルチェックはビッグウェインを本気にさせますが、その一撃の前に敗れます。しかし、ゴチャックが銃殺刑になることを絶命間際のブルギットから知ったビッグウェインは、急いでゴチャックのもとへ戻ります。
まだビッグウェインを見つけられない軍団員たち。「未だ発見できません!」と、突然ローテールの女性ボイスが聞こえて、ちょっとびっくり。
「これだけ探してわからぬということは、チェックポイントの狭間とにらんだ!全員、向こうの谷をさかのぼれ!!」という凱聖バルスキー。
一同「ハッ!!」と言って命令通りにする軍団員たちですが、この期に及んで見当違いの方向へ走らされる軍団員たちも気の毒です。イヤだなあ、上下関係。
「日の暮れにはカタがつく、ビッグウェインも、貴様も」というバルスキー。
もうすでに日の暮れですが。
これは予想ですが、Aパートでの軍団員集合シーンとゴチャックが拘束されるシーン、そしてさきほどの谷駆け上りシーンに加え、ここからのバルスキーとビッグウェインのやりとりは、全て1日で撮り終えるスケジュールだったのでしょう。
一度にあれだけの着ぐるみキャラクターが登場するとなると、衣装を現場に運ぶだけでも大変ですから、なんとしても1日で撮りきるつもりだったのでしょう。
で、思ったより時間がかかったため、この場面はほとんど日の暮れになったのでしょうか。撮影時期が夏場に入った頃で、日が長くて助かった感じでかもしれません。
そういうわけで、バルスキーとビッグウェインを映したロングの1カットだけ別の日に撮影したものと思われます。
さて、ゴチャックのもとに戻ってくるビッグウェイン。バルスキーは、ゴチャックを助ける条件として、メタルダーと戦い勝つことを言い渡します。負けても身分剥奪だけで済ますとのこと。
「この道しかないか、ただし、追っ手・手出し、いっさい無用!」とビッグウェイン。
「軍団長バルスキーの名にかけて!」とバルスキー。
音楽との相乗効果もあり、実に良いシーンです。これぞ特撮ドラマ。
ビッグウェインは、ゴチャックの“かせ”に何か細工をして、メタルダーとの戦いに挑みます。
「メタルダー、出てこーい!!」とビッグウェインが呼ぶと、メタルダーが現れます。
なかなか空気の読める超人機です。
「ネロス帝国のものか」とメタルダー。
「戦闘ロボット軍団もと豪将ビッグウェイン。死んでもらうぞメタルダー!!」
そして始まるメタルダーと伝説の巨人との戦い。
数々の国の歴史を書き換えたという必殺の矢に苦戦のメタルダー。メタルダーは先週同様、サイドファントムという飛び道具を呼びます。
しかし、ビッグウェインにはその飛び道具さえも受け止め、持ち上げるパワーがありまました。明らかに物理の法則を無視した持ち上げ方ですが、そこが伝説の巨人たる所以でしょう。
それでも、メタルダーはビッグウェインの矢を封じ、レーザーアームでこれを倒します。しかし、メタルダーがその場を去ろうとした時、まるでWWEのジ・アンダー・テイカーのようにムックリと起き上がるビッグウェイン。
ビッグウェインは最後の矢を放ちますが、メタルダーはなんとかこれを止めます。
「初めてだ、こんなに恐ろしい敵は」と、偽りのない言葉を呟くメタルダー。
「メタルダー、ワシが今までで出会った、最強の敵であった…
な…長かった…、すべて、サラバだ…!!」
爆発四散するビッグウェイン。そこへ、かせを外してやってくるゴチャックですが時既に遅し。
「現役を引こうが階級をなくそうが、貴方こそ真の闘士だった。俺は、貴方を忘れない」とゴチャック。
その様子を見ていたバルスキー。
「ビッグウェィン、逃亡者としてではなく戦闘ロボットとして散ったな、見事だ。
この始末については、いっさいこの俺が責任をとる。
たとえ、命をかけても!!」
戦い終わったメタルダーもまた、
「ネロス帝国、その恐ろしさは計り知れない。
しかし、必ず倒す!」
名シーン、名セリフ満載の第11話はこれで終わりです。次回は剣流星出てきます。相変わらず声は飯田道郎ですが。
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