【脚本 佐藤五月 監督 辻 理】
近鉄特急は、あの頃からあの色なのか。
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またまた来ました、まさに「佐藤五月アワー」他の脚本家には絶対に書けない、本当の意味での「悪女」が描かれている回。
私は、こういうの好きです。
「人間にとって、愛は変わらぬものと考えるのは甘いんですか?!」
ラストの紅林の憤懣やる方ない叫びがこだまする。
佐藤脚本にはよく出てくる図式ではあるが、「妻を女中かモノとしか思わない夫」とそれに対し反感・憎悪を持つ女との夫婦関係。
しかし、今回の咲山育子は、その情動が「自立」の方は進まず、夫を社会的に貶めてやるという、ものごっついマイナスの方向に進んでしまった。
夫からもらったのは「弱いものいじめの仕方だけ」というのも、なんとも悲しい。
結局は、あっさり罪を認めてしまった育子ではあるが、全く悪びれない、あまつさえ特命課の面々の前で夫に恥をかかせるあたりは、まさに性悪であるが、いささかの爽快感もある。
流産して落ち込んでいる妻に、亭主が帰ったらメシと風呂だなどとしゃあしゃあと抜かしやがる輩は、男から見ても恥ずかしい。
まさに、姫野友美さんの著書にある「男は解決脳」の典型であるが、私は絶対にこうはなるまいと固く誓うのではあるが。
それはともかく、相手を思うよりも、世間体を守ることの方が価値があるのか?そのことを、かなり極端な描き方ではあるが、見るものに訴えかけているのではないだろうか。
この回のゲスト主役・黛ジュンさんが、咲山育子の淑女の面とと悪女の面、両方を好演している。特に、暑いと言って、ヅラをとってメイクをゴシゴシ落として「本当の自分に戻る」ところは、彼女の内面をよく表現していて印象深い。
にしても、オヤジさんの前でヅラだとぉ…。
あと、口紅の跡を照合したらすぐにじいさん殺しの犯人だって分かるんじゃないかと思ってたら、本当に「唇紋」を取ってて、ちょっと吹いた。それ、決定的な証拠です。
まあ、一番の「敗因」は、何でもかんでもベラベラ喋りまくった、田部っていうオッサンだろうけどね…。
ところで、被害者が咲山信弘に言った「そんなに大事なものなら首にでも縛りつけとけ!」とは、一体なんのことだったのだろう。それが一番気になった。
「あの被害者に色事は考えにくいですがねぇ」という、吉野。
お前といっしょにするな、お前と。
ローケツ染めの講習会の名簿から、咲山育子の名前を見つけた時の、吉野とオヤジさんの「あ」ていう言い方が最高。
あと、団巌さんが「ただのオッサン」の役をやっていたのが、個人的にはツボだった。
(2011.10.28)