【脚本 塙 五郎 監督 辻 理】
行け、行け行け新米野郎!
◆ ◆ ◆
7周年記念。
東都銀行 溜池支店に、行員・客を人質に、猟銃を持った強盗が立て篭もる。
特命課は突入を決断。しかし、そのとき船村刑事を発作が襲う。親父さんは薬を持っていなかった。
薬を飲めないまま、突入作戦に加わる親父さん。そして突入。
しかし、親父さんは犯人を前に引き鉄を引かなかった。
その間に、先に行内へ入っていた高杉婦警は女性行員ともに犯人に撃たれ、行員は死亡。高杉婦警も重体となってしまう。
親父さんは、なぜ撃たなかったのか。やはり発作の影響か、それとも…。
しかし、犯人が持っていた金とは別に、3000万の現金が消えていた。まだ事件は終わっていない…。
やがて、突入の直前にコーヒーを運んできた喫茶店のマスター・広川が共犯であることが分かる。
逃げる広川を追いかける親父さん。しかし…。
前後編の前編であるが、まさに特捜を代表する超絶傑作。
この前後編では、デスクワークへの転身を持ちかけられるも、まだまだ若い、まだまだやれるというところを周囲に見せたい親父さんと、そのことが招いた事態、そして親父さんに対する特命課刑事たちとの対立や葛藤を描きながら、特命課全体の使命や結束を、鮮やかに描き出している。
なお、このシリーズは第13話「愛・弾丸・哀」のリメイクということもあってか、冒頭の突入を決めるシーンも、脚本の指定では土砂降りの雨ということであったが、実際は晴天での撮影になっている。
これは、撮影日程等の都合もあるだろうが(雨降らしの撮影はかなり大変)、もしラストシーンも雨の指定であったならば、はじめは雨にしない方が、ラストの雨の印象が強くなるという意図があったのかもしれない。
だとすれば、これはかなり成功していると言える。
今回、親父さんと主に絡むのは叶。
親父さんに連絡をしなかった叶に、親父さんが怒る!
「思いやりのつもりか?おまえさん、アタシをかばうほど立派なデカになったと思っているのか?10年早いんだよ!アタシらの仕事はホシを捕まえてナンボって仕事だ!楽させてもらって喜ぶと思ってんのか、この俺が!」
一人称がアタシになったり俺になったり、ハゲしい、いや激しいなぁ、親父さん。
そして、重体のカンコを見舞ってほしいと、かつての婚約者に頼みに行く吉野も、ひとつのドラマとなっている。
その元婚約者の態度に、制服を着ていれば、すなわち警官なら誰でも人殺しなのかと怒る吉野。
その吉野に言う課長。
「野球の選手がバットをもっているように、警官が拳銃を携帯することは、当然のように慣らされている。
そこなんだ。その慣らされているということが、恐い、恐ろしいことなんだ。
耐えず、そのことを思ってなくちゃいかん。それを思って、思いすぎということは決してない!」
これも、実に良いセリフである。
広川に逃げられた親父さんの進退は、事件の黒幕はまだいるのか?
「おやじさ━━━━ん!!!」と、雨に打たれる叶のラブリーな絶叫とともに、次回に続きます。
この回、親父さんの亡くなった奥さんの遺影が映るのだが、その写真、かなり若い頃の風見章子さんの「プロモーション写真」なのでは…。
ゲスト出演者では、芦川よしみさんが登場。大阪弁がかなり可愛い。
また、喫茶店のマスター・広川役で、北村総一郎さんが登場。
実は、DVD BOX Vol.1では、この前後編と、蒲生の「挑戦」編が同じディスクに収録されているので、収録回4本全てに北村さん登場!となるのだが。
死亡した大島の遺族が警察を訴えたと聞いて「面白くないね〜!」という吉野。
その言い方が面白い。
そして、その大島の葬儀にも顔を出さない、別れた亭主について、橘警部の前で「別れるくらいなら、子供なんかつくんなきゃいいんですよ!」と言っておいて、
「あ」
と、地雷を踏んでいたことに気がつく吉野。
「橘さんのことじゃないっすヨ」と、取り繕ってみても、
時すでに遅し。
それはそうと、突入直前にラーメン屋に変装した吉野。似合う、似合うぞ…。
(2011/11/13)