特捜最前線 第147話 殉職II・帰らざる笑顔!

【脚本 長坂秀佳  監督 天野利彦】

「どこだ、どこだ津上!お前ならどう答える?!」

◆   ◆   ◆

おそらく当時は、刑事ドラマで殉職と聞くと「太陽にほえろ!」に代表されるような、こう言ってはなんだが、血生臭い展開を予想した視聴者は少なくなかったはずである。

しかし、もしそうだとしたら、視聴者の予想は、おそらく良い意味で裏切られたことになるであろう。

もちろん、後発の強みというのもあるだろうが、他のドラマの殉職編と比べ、際立って異なる点がいくつかある。

まず、その死が「唐突」であったり、ストーリーが破綻していたりしないこと。

また「犬死に」ではなく、文字通り、命を賭けて何かを守ったこと。

そして、津上の死を悼み、悲しむ特命課刑事たちの描写が十分にあったことなどがあげられる。

加えて、津上が乗って炎上した車が、あたかも「墓標」のように残り、象徴的に扱われてことも、特筆すべき点であろう。

さらに凄いのは、まだ事件が「終わっていない」点である。

よくよく考えれば、殉職編というのは完全な「ネタバレ」である。結末が分かってしまっているのである。誰が犯人かを始めに宣言しているのと、実質的に変わらないのである。

従って、従来の殉職編は「ただ、分かりきった結末になるまでを追うだけ」の話になってしまっていた。

しかし、この前後編は、その点も大きく違っている。津上が死んでもなお、事件は解決していないのだ。

そして、捜査は難航する。本ボシもボツリヌス菌も見つからない。

「津上、もうすぐだ…もうすぐお前の仇をとってやるぞ…!」

「…!!」←青谷を前に目がイッちゃってる橘と紅林

「菌はどこだ…どこにある!!?」

「津上…課長までおかしくなってしまった。事件がデカいからじゃない…お前が死んだことで、みんながおかしくなってしまっているんだ!

津上…お前ならこのヤマをどうする?」

焦り、常軌を逸し、感情的になる特命課。

そんな時、生前の津上が語った言葉が突破口を開くという展開。

「見当違いの方向…」

「僕の回りにいる誰か…」

「あんな山崎…細田は山崎をしっていたんだ…!」

「子を思う親の気持ち…」

「時間…?」

「どっからくる?細田はどんな手でくるんだ?教えてくれ…津上、教えてくれ!!」

「屋上だ…!」

これは、津上は死んだあとでも、なお捜査に加わっているということを描くと同時に、津上と特命課の固い絆を描くことにもなっており、この前後編を「ただ刑事が死ぬだけの話」に終わらせない要因になっている。

私も数多く刑事ドラマの殉職編を見てきたが、やはりこの話が「ぶっちぎりで」ベスト1である。古い作品であるが、DVD化もされてあるので、一人でも多くの方に視聴してもらいたい作品である。

この回、兄の遺影を前に語る、妹のトモ子。

「まだ28歳だったのに…恋人さえ作れず、一生懸命仕事に励んでたのに…」

死んだのをいいことに、けっこう言われたい放題のような気が…。

殺人予告の声明ビラを読み上げる桜井。それを聞いて吉野が一言、

「黒の十字軍…!」

こんな話なのに、明らかに「狙ってる」のがちょっと笑いを誘う。

ちなみに、銀行強盗の主犯で、細田に殺された男の名は「鏑木」。

一時期、auのCMで「読めない名前」としてネタになった名前であるが、読み方は「かぶらぎ」

それと「山崎とともに看板屋へ行った女」は、最後まで分からなかったような。時間軸で考えれば、鏑木の仲間のオンナでもなさそうだし。誰?

てか、それよりも気になったのは、トモ子ちゃんにお守りを渡す時に映った、吉野の「手の傷」だったりするのだが。あれ、本物の傷だよね。なにがあった?

(2011/11/23)

【この回はこのDVDに収録されています】

特捜最前線 BEST SELECTION BOX Vol.1

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