【脚本 宗方寿郎(石松愛弘) 監督 永野靖忠】
周知の通り、第1話となるはずだった長坂脚本が第1話とならなかったため、新たに第1話として製作された回(この長坂脚本は後に手直しされ、第7話『愛の刑事魂』として放送)。
第1話からいきなり、神代が慕う先輩刑事が絡んだと思われる事件を追うという展開は良い。ストーリー展開も、第1話ということを考えれば、第3パートまでは流れはいい。
ただし、第4パートでは、長坂氏が嫌う“犯人が人質をとって撃つぞと言ってるのに刑事がずんずん近づいていく”場面がある。長坂氏が『長坂秀佳術』で表現した「銃弾の雨アラレ」というのはオーバーだとしても(むしろ実際に撃ったのは神代の一発だけ)、確かに人質(神代の先輩刑事の娘)に犯人が銃をつきつけているのに、船村がずんずん近づいていくシーンがある。
おそらく、後の『特捜』を全く知らず、純粋にこの回だけ見たら、十分「このドラマは今までのものとは違うな」と思わせるだけのものではある。ただ、半ばタイムスリップしてこの第1話を見ている私のようなものにとっては、後の傑作群を知っているだけに、やや不満が残ると言えば残る。
この回、最初の方で見られる1分35秒の長回しをはじめ、長めに撮られたカットがいくつかある反面、あまり意味のない細かいカット編集なども見られる。後者の方は、あまり成功しているとはいえない演出だった。
また、神代の切れ者具合や桜井のクールさ、船村の人情味などは描かれていたが、津上はほとんどセリフがなく、正直いるのかいないのか分からないくらい存在感がなかった。
ちなみに特命課のセット、課長の机の後ろといえば東京の地図だが、この時期は何やらレーダーのようなものが装備されていた。
エンディングはもちろん『私だけの十字架』。初期はフルコーラス流れるパターンが多かったが、第1話もフルコーラス。オープニングはこの曲のアレンジ曲だが、森山周一郎のナレーションは、後に変更されるものに比べ、やや高いトーンのものになっている。
それにしても…自分の飲みかけのコーヒー課長に飲ませるなよ高杉。
【特日々時代にいただいたコメントと稲妻猿人(あさみや紫苑)の返し】
投稿者:走れ紅林
2007/3/9 12:36
お久しぶりです。
作品そのものの評価は別として、まさに今回から“特捜”の歴史が始まったという意味においては、記念碑的な作品ですね。
元々“特捜”は前番組“特別機動捜査隊”との違いを出しつつ、“太陽にほえろ!”とも戦わなければ?ならないという運命を背負った作品でした。
しかしこの時期はまだ製作者側も作品を掴みきれておらず、試行錯誤の中で始まったのではないでしょうか。課長も結構ドライな人間に見えますし、津上も影が薄いですしね…
そう言えばこのドラマは“刑事を扱った人間ドラマ”という企画意図だったとの事、実現はしませんでしたが事件の起こらない話も考えていたそうですがもし実現していたら面白かったでしょうね。
投稿者:稲妻猿人
2007/3/9 19:28
>走れ紅林さん
おひさしぶりです。
そもそも『特捜』は『太陽』への対抗心と言うか、アンチテーゼというものが多分にあったようですね。主たるボスが石原裕次郎に対して二谷英明というのもまた因果な気がします。
『特別機動捜査隊』といえば、刑事ドラマとしての最長記録番組(おそらく二度と破られることはないでしょう)でしたから、その後番組ということも結構ブレッシャーだったでしょうね。
確かにまだこの頃は作品のカラーが固まってない頃ですね。もし私が、まだ『特捜』を見たことがない人にDVDをすすめるとしても、第1話から見てとは多少言いにくいです(多分、初めての人にはまず『乙種蹄状指紋の謎』をすすめると思います)。
初期の作品も、幸い再放送で以前見ましたが、課長がもうドライを通り越して非情ともダーティーともとれる回もあったりしました。それはそれでまた、番組創世時の魅力かもしれませんが。
>事件の起こらない話
長坂氏によると伝票処理だけの話とかも考えていたようですが、もし実現していたら、あの濃いメンバーでどんな話になったのか、興味ありますよね。