特捜最前線 第13話 愛・弾丸・哀

【脚本 舘野 彰(塙 五郎) 佐藤 肇 監督 佐藤 肇】…

津上の甘チャンぶりが遺憾なく発揮された回。

冒頭、どしゃ降りの中、銀行強盗後たてこもっていた犯人逮捕のため刑事が突入、テンポが高めの音楽3曲数珠つなぎという、かなりのハイテンションで始まる。

突入の際、犯人を撃てなかった津上。桜井や課長に不信感を募らせる津上。そこへふってわいた妹誘拐事件。そしてその誘拐と逮捕した犯人とのつながり、と話は進んでいく。

個性派集団の中にあって、ややキャラが薄いようにも見える津上が、時に見せる若さと暴走ぐあいが描かれている。

前半、津上にさんざん非難されながらも、妹救出に協力する桜井がいい。小銭を落とした津上に「落ちましたよ」と拾う桜井の登場は、なかなかいい演出。

また、津上が特命課で電話をとった時にいた高杉が、その後、金を渡す際に駅員に化けたりと、いい働きを見せる。まあ途中で撃たれて動きが止まるのだが。

そしてなんといっても凶悪なおやじさん。「津上くん、壊れ物片づけようか」とか「こちとら伊達や酔狂で頭禿げくらかしてるるわけじゃねえんだ」と三谷昇を脅しまくる。いいキャラだなあ、どっちも。

この回もまた、長坂氏が嫌う、“犯人が撃つと言ってるのにずんずん近づいていく”の図が見られる。実際今回は、犯人が津上の妹を撃とうとしたが、寸でのところで津上が犯人を撃つというところで終わっている。長坂氏はほとほとこのシチュエーションに嫌気がさしたのか、ついに後の『神代夏子』編を書くことになるのである。

また誘拐犯の要求に反し、一度は金の代わりに偽金を犯人に渡した神代。しかし後の『誘拐』編では、犯人との約束を破ったため子供が殺され、続けて誘拐された子供を救うために、本物の金を用意するために必死に上層部を説得する神代が描かれている。

長坂氏が『誘拐』編を書いた経緯を見聞して判断する限りでは、特にこの回に対するアンチテーゼというものは無かったようだが、その回を知ってから第13話を見ると、偽金を用意するという行動に出た神代が不可解にも見え、また若干話が安っぽくも見える。まあこれも、タイムスリップ状態だから言えることなのだが。

つまり、この時点での『特捜』は、まだ“ありがちな刑事ドラマ”の域を出ていなかったということだろうか。

ちなみに、後の『哀・弾丸・愛』はこの回のリメイクと言われているが、脚本では冒頭がどしゃぶりであったことからもそれがうかがえる(実際には晴れで撮影されている)。

ついでに、津上の妹さん役は、この回と『殉職』の時では役者さんが違うのだが、私は初代津上トモ子のほうが好みです(誰もそんなこと聞いてない)。ラストカットの、あの胸を押さえた仕草の愛おしさは一体なんでしょう。

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特捜最前線 第1話 愛の十字架

【脚本 宗方寿郎(石松愛弘) 監督 永野靖忠】…

周知の通り、第1話となるはずだった長坂脚本が第1話とならなかったため、新たに第1話として製作された回(この長坂脚本は後に手直しされ、第7話『愛の刑事魂』として放送)。

第1話からいきなり、神代が慕う先輩刑事が絡んだと思われる事件を追うという展開は良い。ストーリー展開も、第1話ということを考えれば、第3パートまでは流れはいい。

ただし、第4パートでは、長坂氏が嫌う“犯人が人質をとって撃つぞと言ってるのに刑事がずんずん近づいていく”場面がある。長坂氏が『長坂秀佳術』で表現した「銃弾の雨アラレ」というのはオーバーだとしても(むしろ実際に撃ったのは神代の一発だけ)、確かに人質(神代の先輩刑事の娘)に犯人が銃をつきつけているのに、船村がずんずん近づいていくシーンがある。

おそらく、後の『特捜』を全く知らず、純粋にこの回だけ見たら、十分「このドラマは今までのものとは違うな」と思わせるだけのものではある。ただ、半ばタイムスリップしてこの第1話を見ている私のようなものにとっては、後の傑作群を知っているだけに、やや不満が残ると言えば残る。

この回、最初の方で見られる1分35秒の長回しをはじめ、長めに撮られたカットがいくつかある反面、あまり意味のない細かいカット編集なども見られる。後者の方は、あまり成功しているとはいえない演出だった。

また、神代の切れ者具合や桜井のクールさ、船村の人情味などは描かれていたが、津上はほとんどセリフがなく、正直いるのかいないのか分からないくらい存在感がなかった。

ちなみに特命課のセット、課長の机の後ろといえば東京の地図だが、この時期は何やらレーダーのようなものが装備されていた。

エンディングはもちろん『私だけの十字架』。初期はフルコーラス流れるパターンが多かったが、第1話もフルコーラス。オープニングはこの曲のアレンジ曲だが、森山周一郎のナレーションは、後に変更されるものに比べ、やや高いトーンのものになっている。

それにしても…自分の飲みかけのコーヒー課長に飲ませるなよ高杉。

【特日々時代にいただいたコメントと稲妻猿人(あさみや紫苑)の返し】

投稿者:走れ紅林
2007/3/9 12:36
お久しぶりです。

作品そのものの評価は別として、まさに今回から“特捜”の歴史が始まったという意味においては、記念碑的な作品ですね。

元々“特捜”は前番組“特別機動捜査隊”との違いを出しつつ、“太陽にほえろ!”とも戦わなければ?ならないという運命を背負った作品でした。

しかしこの時期はまだ製作者側も作品を掴みきれておらず、試行錯誤の中で始まったのではないでしょうか。課長も結構ドライな人間に見えますし、津上も影が薄いですしね… 

そう言えばこのドラマは“刑事を扱った人間ドラマ”という企画意図だったとの事、実現はしませんでしたが事件の起こらない話も考えていたそうですがもし実現していたら面白かったでしょうね。

投稿者:稲妻猿人
2007/3/9 19:28
>走れ紅林さん
おひさしぶりです。
そもそも『特捜』は『太陽』への対抗心と言うか、アンチテーゼというものが多分にあったようですね。主たるボスが石原裕次郎に対して二谷英明というのもまた因果な気がします。
『特別機動捜査隊』といえば、刑事ドラマとしての最長記録番組(おそらく二度と破られることはないでしょう)でしたから、その後番組ということも結構ブレッシャーだったでしょうね。

確かにまだこの頃は作品のカラーが固まってない頃ですね。もし私が、まだ『特捜』を見たことがない人にDVDをすすめるとしても、第1話から見てとは多少言いにくいです(多分、初めての人にはまず『乙種蹄状指紋の謎』をすすめると思います)。
初期の作品も、幸い再放送で以前見ましたが、課長がもうドライを通り越して非情ともダーティーともとれる回もあったりしました。それはそれでまた、番組創世時の魅力かもしれませんが。

>事件の起こらない話
長坂氏によると伝票処理だけの話とかも考えていたようですが、もし実現していたら、あの濃いメンバーでどんな話になったのか、興味ありますよね。

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