特捜最前線 第421話 人妻を愛した刑事!


【脚本 長坂秀佳 監督 辻 理】

切ないなぁ、切ないぞ吉野!!

しかも、このあと半年も経たずに吉野が殉職するかと思うと、切なさ100倍だ。

長坂氏が、特捜で2本だけ書いたという“恋愛もの”。その2本目が本作。

スギャンダルが噂されていた女性モデルを殺したとして逮捕された写真家・堀尾。しかし、堀尾は殺してないという。

その妻・伊久世に惚れてしまった吉野は、夫の無実を晴らすべく奔走する。

夫の無実を晴らすことは、すなわち自分の恋も終わることを意味することであり、むしろ恋敵には刑務所に入っててもらった方が、こっちとしては好都合、と並の男なら思ってしまうのだが、そうしないところが男・吉野。

自分の中の“男”の部分をなんとか刑事という顔で隠しながら捜査をする吉野だが、結局「9年8ヶ月の歴史には勝てない」と、伊久世をあきらめようとする吉野。

その悲しいまでの潔さが、見るものの胸を打つ。

所轄が結論を出した捜査を掘り返そうとする吉野に、なぜそうするのかと聞く課長。

「では聞くが、堀尾喜明の無実を信じるのか」
「夫人を信じています。あの人はウソをつくような人じゃありません」

「証明できる自信はあるのか」
「わかりません」

「捜査の糸口は見えているのか」
「わかりません」

「手がかりをつかむ自信はあるのか」
「わかりません」

「夫人を信じる根拠は」
「わかりません」

「…では、なぜやる」
「好きだからです!!」

一同( ゚д゚)ポカーン。

しかし、そんな吉野に、5日間だけとはいえ猶予を与える激甘な課長と、「堀尾喜明や夫人のためじゃない、おまえのためだ」と、ちゃんと吉野をフォローして動いている特命課。

恋した刑事に、他の刑事がさりげなく協力するというのは、長坂氏の恋愛もの1本目『上野発“幻”駅行き』にも見られた展開。

加えて本作は、事件の真相を解明することは他の刑事にまかせ、吉野はあくまで伊久世の側にいて行動するという描き方になっている。

さらにはアクションも吉野の見せ場。ついに現れた真犯人に追いつめられる吉野・伊久世と真相の証言者。

拳銃を持った犯人に対し、拳銃を使わずに(おそらく、もともと持ってなかったはず)、吉野が機転を利かせて、素手でねじ伏せるというのも、実にカッコよくて良い。

しかし、訪れる恋の終わり。吉野が言った“嫌いな女”の行動を、わざと全て吉野の前でする伊久世。

お互いの気持ちがよく分かるだけに、胸を締めつけられるような、悲しく切ないラスト。長坂氏も「この時の新井晴美は良かった」と書いているが、今回の“長坂秀佳シリーズ”では、この回がワタシ的には一番のお気に入りである。

もうひとつ、ワタシが興味深く思ったのは、吉野にとって、叶こそが自分の心中を全て打ち明けられる存在であると描かれていること。叶もまた、その吉野を理解している。ラストのナレーションも、叶によって語られていた。

そして何より、この回が、主役かどうかに関わらず、長坂脚本で描かれる“最後の吉野”になってしまうのである…。

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