特捜最前線 第317話 掌紋300202!


【脚本 長坂秀佳 監督 田中秀夫】

「私の意見をまだ言ってなかったな。サンマルマルフタマルフタ、橘とおんなじだ!」って課長。

ホンマか?

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一度は『特捜』を降りた長坂氏が、再び書いた復帰第1作。その話はとんでもない傑作。

面白い話であっても多少はネタバレしていい回もあるが、この回に関しては詳しい中身をバラせない。ぜひ実際にご覧なって、その面白さを実感していただきたいので、中身についてはいっさい書かないこととする。

ただ、原版の状態があまりよくなかったのか、音声がこもって聞こえるのが残念(実は『橘警部逃亡』『一円玉の詩』もそう)。もしかしたら、ファミ劇の再放送版の方が音は良いかも…。

というわけで、周辺情報だけ。この回、あの天本英世さんがゲスト出演している。死神博士から10年以上、プロフェッサーKの前ということになるが…変わってないなあ。

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《掌紋300202! ネタバレ上等編》

ここから先は、本当に核心の部分に触れていますので、作品を未見の方は、ご覧にならない方が良いことを、お断りしておきます。

著書によれば、本当に『リミット1.5秒』を最後に、「特捜」には戻ってこないつもりだったという、長坂秀佳氏。

つまり、もしかしたら、この第317話は、この世に存在しない話になっていたかもしれないということである。

その復帰第1作は、叶の父親の話。

特命課刑事の身内の話というのはよくあるのだが、叶については以前『逮捕・魔の24時間』で、叶の姉と名乗る女が出てきたりしたが、結局核心に迫るものではなかった。

また「母……」では、紅林の母親を名乗る女が現れたが、結局は違った、ということもあった(紅林の母親は、後に、すでに死亡していたことが語られる)。

そういうことも踏まえると、「叶の父か?」とされた城所徳永も、「叶の父と思わせて、実はやっぱり違う、という話なんじゃないの?」と、ちょっと意地悪な見方もしていたが…。

本当に、城所徳永は、叶の父親だったのだ。

しかし、父親が分かったからといって、素直に感情を表現できない、叶の複雑な心境、そして「本当に父親は自分に対して愛情を持っているのか?」という疑念。

そして叶は、父親の愛情を“父親の死”によって初めて知るという、悲しい展開。

一説には「長坂氏が一番気に入っていた刑事」とも言われる叶編で、しかも長坂氏が生涯のテーマとしている“父と子”が描かれている復帰第1作。

脚本自体に、相当に力が入れられていることは言うまでもなく、面白くないはずがない。

ストーリー自体も、政界汚職に関するという“サクラノート”の詳細や、殺し屋(?)北丸をよこした某大物は誰なのかという部分には全く触れず、叶と城所徳永との、また叶と特命課刑事たちとの芝居に重点が置かれている。

やはり圧巻なのは、6桁の暗証番号を、午前8時に正確に打ち込まないと開かないという金庫を開くため、刑事たちが番号を推測する第4パート。

叶・桜井・橘、それぞれの推測の根拠は、

叶…城所の誕生日。自己中心的な男なので、それ以外には考えられない

桜井…メインバンクの口座番号。最後は金しか信用しなかった男だから

橘…自分がいっとう大事に思っている人の生年月日。すなわち、叶の誕生日「30 02 02」

そして、城所が叶に対しどれだけ愛情を持っていたかを橘が説き、桜井も「さっきの俺の意見は撤回する、橘さんの意見を支持する」となり、その通り、暗証番号300202で金庫が開く。

叶はこの時、本当に城所が、息子である自分を愛していたことを知る。

実に濃い、良いドラマであった。叶役の夏夕介氏にも、この脚本を演じるにあたって相当なプレッシャーがあったと思うが、見事に大役を果たしてくれたように思う。

まあ実際は、橘が多少オイシイところを持っていった感がなくはないが…。まあそれはいいとして。

ちなみに、であるが、DVD特典のインタビューによると、この金庫のシーンは、一度撮影が行われたものの、「フィルムに傷がついていた」という理由で、撮り直したということだ。

これは完全な想像だが、本当にフィルムに傷なんてついていたのだろうか。

もしかしたら、上がったラッシュフィルムを見て「もっといい画が欲しい、もっといい演技ができるはずだ」と思った監督が、もう一回撮るために、わざとそう言ったのではないか…と、思ったりするのだが、真相はいかに。

ただ、名セリフ続出の本作にあって、個人的にワタシが一番気に入ってるのは「もし、開かなかったら…」という叶に対し、開くのを確信して、道具の手入れに余念がないのに「爆発は8時2分だ、2分あればかなり走れる」という、桜井のセリフだったりするのだが。

あと、叶が窓を突き破って人を落っことして死なせたのって、『マネキュアをした銀行ギャング』に続いて2回めか。

あ、この時の監督も田中秀夫…。

(2008.11.15)

【この回はこのDVDに収録されています】

特捜最前線 BEST SELECTION BOX Vol.1

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