特捜最前線 第161話 復讐II・5億円が舞い散るとき!

【脚本 長坂秀佳  監督 天野利彦】

今のがダイナマイトなら、この部屋は無くなっている。

◆   ◆   ◆

消火器型爆弾の処理を橘たちにまかせ、自らは「止めることのできない」バリコン爆弾をなんとか止めようとする神代課長。

脱出なるか…!

こういってはなんだが、最大の見せ場が第1パートであり、以降の「事件の真相」がオマケに感じてしまうくらい、高いテンションの「脱出劇」。

相変わらず、長坂脚本では「エラいことをさせられる」神代課長こと二谷英明さんであるが、今回も、お茶や花瓶の水を爆弾に必死にかけるという、傍から見ると妙なシチュエーションでありながら、その名演が、バリコン爆弾の恐ろしさを表現している。

そして、

「命令だ!退避しろ!橘、頼む!みんなを下がらせてくれ!!」という課長と、

「いえ、全員ここにおります…!」

と、固唾をのんで行く末を案ずる刑事たち、その特命課の絆の強さも描かれている。

爆弾を不発に終わらせたあと、事情を知らない刑事たちは、まず課長に駆け寄るが、それを振り切るように、カンコに寄り添う課長の姿も、また素晴らしかった。

第1パートが、ある意味最大の山場であったが、事件の真相から浮かび上がる作品のテーマとしては、責任をなすりつけあう人間の醜さ、そして、犯人もまた実は被害者であるということである。

結局本当は誰が「本当の悪者」かは分からないまま、悲劇的な結末を迎える本作であるが、誰が悪者にせよ、頭取・支店長、そして細島刑事部長たちは、非を認めなかったツケとして、一生消えない十字架を背負うことになるのであろうか。

この回「3悪人」には、後に西部警察のレギュラーともなる高城淳一さんや、特捜の長坂脚本回の「常連」でもある田口計などが扮しており、良い意味でアクの強い存在感を示している。

で、この前後編で一番怖かったのは、こんな時に限って滝がやってくることだったりして…。

「(ガチャ)どーもどーも、遅くなりまして…

ドカ━━━━ン!!!!(以下略)

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復讐編おまけ 疑問その1 なんで最上階なんだ?

特命捜査課とはもちろん架空の組織である。

警視庁の組織であるが、もしも、特命課が普通に警視庁の建物にあったら、きっとつまらなかっただろう。

特命捜査課が、架空の組織であるにもかかわらず、妙なリアリズムをファンに感じさせるのは、きっと、警視庁ではない、実在する建物の中に 本部を置いていたことに起因するのではないか。

特命捜査課は、東京にある「東邦生命ビル」の最上階にあるということである。

特命課の特性上(神代課長いわく「我々は他がやらないことをする。そしていまひとつ、他がやれないことをする。そうでなければ特命捜査課の意味がない」-第40話『初指令・北北東へ急行せよ!』)、警視庁内ではなく、その外に活動拠点が置かれている、という設定であった。

そのため、我々ファンは「このビルに特命課があったんだ」と愛着を覚える。

おそらく、警視庁内にあったら、これほどの愛着はもたれなかったであろう。警視庁の組織が警視庁内にある。やはりドラマとしてはつまらない。

だが、この「復讐編」ではそれが仇になった形である。

特命課は犯人に、ビル内の人全員を人質にとられた格好なのである。特命捜査課最大のピンチ!

ところで、先にも書いたが、特命捜査課はビルの最上階にある。で、このビル、何階建てかというと、33階建てであるという。

おおっ!東京にそびえ立つ高層ビルの最上階にオフィス!あこがれるではないか! 

…ん?ちょっとまてよ。確かに民間企業ならステータスもあろうが、特命捜査課の仕事は、犯罪の捜査や犯人の逮捕である。

最上階で本当にいいのか?

疑問その2 不便きわまりない!

だいたい、33階というのは、いくら何でも高すぎる。

どんなに迅速に報告したいと思っても、エレベーターでゆうに2,3分はかかるはずだ。

まさか、エンパイアステートビル早登り大会のように、全ての体力を報告で使うわけにはいかない。どんなにがんばっても、エレベーターの速度以上の速さで移動できないのだ。

課長の一大事とさとった特命課刑事たち。きっと、エレベーター内で走る真似をして高ぶる気持ちを抑えていたに違いない。

またその逆、出動に至ってはもっと事態は深刻である。

「ちょっと聞き込み行ってきまーす」くらいならいいが、一分一秒を争って出動しなければ行けない事態はしばしばのはず。
しかしやはり、どんなに急いでもエレベーター以上のスピードは出ない。

おそらく駐車場は地下であろう。まさか「自由落下の法則!」とか言ってビルから地上に飛び降りるわけにも行かない。きっとまた刑事は箱の中で駆け足だ。

いやそれより、エレベーター自体がトラブルで動かなくなることもあり得る。そうなると何とも動きようがなくなり、一巻の終わりである。

このように、最上階では不便なことが多すぎる。迅速な捜査と出動を旨とするなら、せめて10階以下にしていただきたい。

がしかし、何階にあるかとかそういうこと以前に、特命捜査課にはもっと重大な欠陥があるのだ。

疑問その3 めっちゃ無防備やん!

 カンコ「あー!あたしお昼おごる約束してたんです!」
 神代「誰とだ?」
 カンコ「いつもノックもしないで入ってくるあのコです!」

という会話が劇中であった。つまり、特命捜査課とは、そこらへんの民間人がノックもしないで入れる場所なのだ。警視庁や警察署内にある部署なら当然建物自体に警備がいようが、普通のビルに入っている以上、ビルの入り口で入る人間をひとりひとりチェックするわけにはいかない。

となると、入り放題である。

さらに致命的なことがある。他の刑事ものを見ても、たいていその部署で一番えらい人間のデスクは、入り口から遠い場所にある。これはいわゆる「上座」であり、当然といえば当然である。

しかし、日本の常識は、特命捜査課においてはここでも通じない。

なぜなら、ドアを開けて真っ先に飛び込んでくるのが何あろう課長の机だからだ。

これは、部下が課長に詳細を報告する際にはすこぶる便利であろうが、侵入者があった場合、真っ先に逝ってしまうのが課長ということになりかねない。

課長の身を大事に思うなら、せめてお茶のあった場所に課長のデスクを移動されたい。

とどめに、特命課のドアは、もうこれ以上無い「This is door」である。

医者の不養生ではないが、自分たちが刑事であるからだろうか、セキュリティに対する意識が完全に欠如している。

せめて鉄のドアか、暗号とか声紋とかがないと開けることのできないドアにでもしていただきたい。

疑問その4 苦情は来ないのか?

特命捜査課という、警視庁の一部署が、たまたま民間のビルに入っていたために、そこに勤めていた人々は多大なる迷惑を被った。

こうなると当然、「このビルから特命課出て行け運動」が起こることは十分考えられる。もしかして、この事態がおこるまで、ビル内に警視庁特命課があるとは知らされていなかったのでは…と思ったが、いろいろなエピソードを見て想像する限り、特に秘密にされていたわけではないらしい。

むしろ周知の事実だった可能性の方が高い。もしかして、警察の部署があるから「守ってくれてるーvv」等と考えていたのだろうか。むしろ現実は狙われ放題なのだが。

まあ、結局最終回まで特命捜査課として使われたところをみると、大した問題にはならなかったのだろう。平和な国である。

ただ、ひとつの心配は、カンコと原日出子の関係が崩壊していないかということである。今度こそ本当に、お詫びにおごってあげてください。

【この回はこのDVDに収録されています】

特捜最前線 BEST BOX2

(2011/11/25)

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