特捜最前線 第85話 死刑執行0秒前!


【脚本 長坂秀佳 監督 天野利彦】

刑事ドラマは、一般的に、事件発生→捜査→犯人逮捕という大きな流れで構成される。だが、「特捜最前線」で多くの脚本を書いた長坂秀佳さんは、あえてそのパターンを崩すことを試みていたようだ。特に、『新宿ナイト・イン・フィーバー』次の『死んだ男の赤とんぼ!』そして本作では、それが顕著である。

『新宿~』『死んだ~』では、ドラマの中で、犯人逮捕ということには全く興味を示さず、ひたすら一人の人間の生き様を追っている。本作は、その2本とは性質を異にするが、際立っているのは、”決して、刑事ドラマは犯人逮捕だけがカタルシスではない”ということを如実にあらわしているという点である。その意味から言って、この『死刑執行0秒前!』は、紛れもなく傑作なのである。

この中で、ひとつすばらしい描き方をしたと思うのは、死刑が明日であることを知らされて、阿久根が叫び、暴れるところである。その前までは、死刑になることなんて怖くなくなった、と言っていたが、それはただの強がり、本当は恐ろしくてたまらない…。その描写が真に迫るものがあって、物語の流れの中でも重要なシーンだった。すばらしかったと思う。

ラスト、「ここだ…間違いない…!」と、自分が死体を埋めた場所を指し示す、真犯人・君塚。それを見て、なんとも言えない表情でその場にへたりこみ、君塚に近寄っていく船村。その時、「無線だ!!」と叫ぶ橘の声も、きっと聞こえていなかっただろう。そして雨上がりの土の上で抱き合う二人。すばらしいラストだった。

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